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【イトナミコラム1】 日本酒ってなあに?その1

はじめに


こんにちは、出雲杜氏、醸造家の小島です。

私は1984年岐阜生まれ愛知県育ちで大学生時代にシングルモルトウイスキーに感銘を受けて21歳から酒屋で働くようになりました。

その過程で日本酒にハマり、25歳のときに出雲の酒蔵に弟子入りして酒造りを行う蔵人(くらびと)になって日本酒造りの修行を始めました。

30歳になると蔵人の長である杜氏に就任し、同時に杜氏集団・出雲杜氏組合所属の出雲杜氏となりました(蔵元杜氏ではありません)。インタビューページや動画もあるので御覧ください。

小島達也インタビューページ

youtube動画紹介

私が酒造りをしていていつも思うことは、日本酒ってなんだろう?ということです。

世間的に日本酒という存在の認知度は高いのに、その内容、背景が知られていることはほとんどありません。「日本酒はお米から造られる日本のお酒」くらいの認識だと思います。

私はなぜか日本酒に魅了されて酒造りをはじめ、「なぜ人は酒を造るのか。なぜ人は酒を飲むのか」ということを考えるようになりました。この本質的な理由を理解しなくては最高の日本酒は造れないと思ったからです。

しかしながら、いくら日本酒のことを調べてもその答えはどこにも書いてありませんでした。酒屋さん、製造者、日本酒の本、酒造りの本、国税などを見ても人間が酒を造って飲む理由が記されていなったのです。

日本酒の現場や管理している団体が、日本酒を造る理由と飲む理由がわからないのならば、一般の人が日本酒を知らないのも当然です。

私は「なぜ人は酒を造るのか。なぜ人は酒を飲むのか」という答えを見つけようと、日本と日本人の歴史を調べ始めました。その過程で私は民俗学と出雲の歴史と出会い、その中で求めていた答えを見つけました。

日本酒の本質は「酒類としての日本酒」の中には存在しておらず、「日本人の酒としての日本酒」の中に存在していたのです。


山田錦

日本酒は日本人を表現する酒


日本酒は日本人固有の酒であり、日本人を知らなければ、日本酒を理解することが出来ないという事が分かりました。

私は「なぜ人は酒を造り、なぜ人は酒を飲むのか」を追求することで日本酒を造る本当の理由を見つけ、自分が造る日本酒でそのことを表現することで、その答えを確認して来ました。

杜氏経験も増え、想いを形にする現実的な技術を徐々に身につけて一定の確証を得るようになり、酒造りだけではなく文章でも残して見ようと思いました。

人類文化や民俗、歴史や文化の話が出てきます。それは正史を追い求めるものではなく、醸造家が良い酒を造るための表現方法やインスピレーションを得るための解釈をしています。どうぞよろしくお願いいたします。

出雲大社への奉納

日本酒ってなあに?1

日本酒とは

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こんにちは、杜氏の小島です。日本酒ってなんでしょうね。

他のお酒と違って「日本」という名がついているし、御神酒(おみき)だったり、國酒(こくしゅ)だったり、色々な呼ばれ方をしています。

そういう訳で、分からないことはさっそくググる。

日本酒を統括している税務署の酒税法によると

・米、米こうじ及び水を原料として発酵させて、こしたもの

・米、米こうじ、水及び清酒かすその他政令で定める物品を原料として発酵させて、こしたもの

・清酒に清酒かすを加えて、こしたもの

・アルコール度数22度未満であること

酒税法

これらが日本酒を名乗ることのできる条件だそうです。

簡単に言うと、「米と米こうじを発酵させて濾したアルコール度数22%未満の液体」ということですね。

ん~。なんかこれではしっくり来ませんね。

だって日本酒って伝統とか、文化とか、なんだか権威のある誇れるものっぽいですよね。

それなのに、この「米と米こうじを発酵させたアルコール22%未満の液体」ってところからは日本の伝統や文化を有していると読み取れません。

続いては酒造りをする会社・酒蔵の組合

日本酒造組合に日本酒とは?という項目がありました。

日本酒の歴史の項目を見ると、700年代に播磨風土記に米を使って酒を醸した記述があると書かれています。

日本酒造組合HP

そして日本酒を造る職人の組合、私も日本酒造杜氏として所属している日本杜氏組合を見てみますが情報がない…。

ここでは特に日本酒を定義する記述がありませんでした。

最後は酒蔵や杜氏を目指す蔵人なら必ず持ってる酒造りの定番本「清酒製造技術」通称、赤本を見てみましょう。

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清酒製造技術 日本醸造協会
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清酒は古来、わが国わが民族固有の酒であり、酒といえば清酒(日本酒)のことである。

今までとは違う記述「民族固有の酒」と書かれています。

あとは大体同じですね。

日本酒にはどうやら「税法上の酒としての日本酒」「日本民族固有の酒としての日本酒」と2つの面があるようです。

「税法上の酒としての日本酒」は具体的な定義ですから、wikiを見ればだいたい分かりますね。

ここから細分化して精米歩合や吟醸、酵母の話に続いていきます。

私たちが普段飲んでいる美味しいお酒としての日本酒は、この範疇で収まるような気がします。

そして「日本民族固有の酒としての日本酒」。

何やら抽象的ですね。

しかしこの中に伝統や日本、國酒、御神酒といったよく分からない日本酒の姿がありそうな気がします。

結婚式で飲んだり、家を建てる前に地鎮祭でお酒を撒いたり、神社で御神酒を飲んだりお供えしたり。

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地鎮祭

ビールやチューハイではそんな事やらないのに、日本酒だけなんだか特別っぽい。

その理由がこの「日本民族固有の酒としての日本酒」の中に隠されていそうです。

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三三九度

日本酒はなにやら私たち日本人にとって特別なものらしいんだけど、民族固有の酒というのは抽象的だから、どこにも詳しく書いてないし、ググってもよくわからないから、うまく説明ができない。

現代人は抽象的なもの、数値化出来ない、証明できないことが苦手ですから、定義から抽象的な日本酒が分からなくなるもの当然ですね。

そんなよく分からない日本酒が、私たち日本人にとって一体どんなものなのか。

日本酒とはなにか。

その答えを探していきたいと思います。

まとめ

日本酒とは
1.税法上の酒としての日本酒
2.日本民族固有の酒としての日本酒

次回、日本酒ってなあに?2では2つ目の日本民族とは何かを探っていきます。


生酛 モトスリ

2020.6.5 天穏HP記載 

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