【インタビュー第1回】 出雲大社 そば処田中屋 そば職人 田中俊樹
2020年06月12日
出雲大社 そば処 田中屋
天穏にまつわる人たちの第1回目。
今回は出雲大社の勢溜(せいだまり)のすぐ近く、出雲大社に参拝に来られる人々をもてなすお店。
「そば処田中屋」のそば職人、田中俊樹さんのご紹介です。
田中さんは食への探究心と感覚の鋭さで注目される若手の料理人です。
今回は出雲大社のそば屋として、どのような心持ちでそばを打ち、お客様をおもてなししているのか、
天穏杜氏の小島が訪ね、お話を伺いました。
そば職人 田中俊樹
出雲大社の地で田中屋の暖簾を守り続け、私の祖父の代から蕎麦屋を始めました。いまは父や母とともに蕎麦屋を営んでいます。
そば処田中屋のお客さまのほとんどは出雲大社に参拝に来られる方ですね。
参拝に合わせてそばだったり名物だったり、お酒も合わせて出雲を観光や参拝をしていただけるといいなと思います。
大社に参拝に来てもらって、蕎麦と地酒で内からも外からも清められる。そうして気持ちを整えていただけると嬉しいですね。
この間、歩くことも大変そうなおばあさんが参拝をしていて、すごく純粋な祈りの姿を見ました。
これが人の行き着くところなんだと感じて。
何千何百年も人が祈り続けてきた場所なので、そこを強く意識しておもてなしをしていきたいです。
ただ、出雲大社に来られるお客さんを観光客という目で見てしまうことが、迎える側にも少しあったりします。
観光客なのか、参拝者の方なのか。
観光地としての出雲、信仰地としての出雲。
より本質へ、元の姿へ。
いつの時代も賑わいのある出雲、誰もが行ってみたくなる魅力溢れる場所。
お客さんが観光客どうこうというより、この土地を自分たちがどう思うかが大事だと思います。
結局は多くの方々に出雲の良さを伝えたいし、来てもらいたいっていうシンプルな想いです。
子供からお年寄りまでが毎日食べられるような優しいそばをつくるのが
自分の使命だと思っています。
このことが優しい天穏のお酒に通じるところがあると思っています。
僕は小島杜氏に刺激を頂いている一人ですね。
お客さんがみんな参拝客の方だとすると、そのおもてなしのために、自ずと迎える側も身が引き締まって仕事が出来る。
出雲大社の門前にいること。
自分たちの考え方ややるべきことがより明確になります。
御神酒(おみき)や神楽(かぐら)もそうですよね。自分が楽しむのではなく誰かのために何かをする。
他者のおもてなしを感じられるから感動する。そういう物が良いものなんじゃないかって。
尊い酒、蕎麦。尊い仕事をしていきたいです。
そばも2人で打っているのですが、それぞれに味わいが違っていて。
原料も水も同じなのに味が違うってことは、それぞれに考えや想いがあるってことですよね。
近くに出雲大社があって参拝者の方が来られる。とても良い環境で仕事をさせていただいていると感じています。
出雲大社で参拝していただいて、地酒の御神酒を飲んでいただいて、おそばを食べてもらって。
それがすごく自然な姿であればと願っています。
日本酒と蕎麦
天穏 杜氏 小島達也×田中屋 田中俊樹
小島:いい話ですね。観光客ではなくて参拝者の方だと思って、おもてなしがしたい。
そこで地酒も飲んでもらえるといいですね。御神酒として。
田中:お清めのお酒ですね。
小島:最初にお酒を飲むということには意味があって、日本酒は米と水で造られていますよね。
お米も水もその土地が集約したものだから、そのお酒を飲むということはその地域を受け入れること。
その土地に認めてもらうという意味があります。
人と人でも、家を建てるときでも、お酒を介してその土地と繋がり合うというか直り合う。
田中:すごく良いことですよね。出雲に来ていただいて、出雲の酒を口に含んでもらえると。
一口飲んでいただけたら、出雲に来たなあと感じてもらえそうですね。
小島:おもてなしの意味が果たせますね。
お酒を飲むと間違いなくそばも美味くなりますしね。味覚が開いて。
田中:ですね。いつも思います。そばの香りもよりグッと感じられますよね。
小島:嘘だろってくらい変わるよね。
田中:お酒を飲んでご飯食べると何が入っているかもよく分かるようになります。不思議ですよね。
お店で昼につくった料理も夜にお酒と合わせてみて、いつも確認しています。
純粋に小島さんの造る酒が好きで、天穏がきっかけで日本酒を好きになった。
繋げてくれたのもそば屋の仕事を通じてでした。
そばと酒は切って切れないものを感じますね。
この想いを共有し、多くの方へ伝えていきたいです。
割子そば
粗挽きの風味豊かなそば粉を使用した、手打ちの田中屋の割子そば。香りと甘さが堪能できます。
みずみずしい質感で滑りがよく、蕎麦切りは駒板を使わず微妙に太さを変えているため、舌触りが楽しく飽きが来ないそばです。
そばつゆは地元の醤油やみりん、出汁は天然の真昆布やうるめいわし、数種の荒節にこだわり濃厚な出汁を使用。
蕎麦前でお酒を飲むと、これらのこだわりが味覚としてより感じられます。
割子と呼ばれる丸い漆器にそばを盛り、薬味とそばつゆを直接かける。「割篭(わりかご)」が語源だといわれ、使い捨ての弁当箱だったようです。
それを「連(れん)」と呼ばれる趣味人たちがあれこれ意見し、何度も繰り返し使えるように漆器に変え洗いやすい丸い形にしました。
さらに慶弔の席でも使えるよう朱塗りにして現在の形になったそうです。三段で一人前ですが、当店では一段より注文を受けております。
お好きな段数注文していただけます。(田中屋より)
釜揚げそば
わかりやすく言うと、温かいそば湯にそばが入っている状態です。ここにそのままそばつゆを掛けて薬味とともにいただきます。
温かく、そば湯とともに食べるため、そばの風味が感じられるやさしい味わいです。
温かいお酒と合わせると幸福感に満たされます。飲んだ後の締めにも最高です。
参拝を済ませ、蕎麦前で天穏 馨蕎(けいきょう)を飲んで、いい具合に味覚が開いたら、割子そば2枚と釜揚げそば1つを楽しむのがオススメです。
釜揚げそばはかけそばと違い、茹でた蕎麦を水洗いせず茹で湯ごと丼に盛る温かいそばです。
そこに薬味と割子にかけるそばつゆと同じものを直接かけて好みの味にします。蕎麦の風味を最大に感じることができ、滋味深く素朴な味わいです。
昔から新そばの時期には神社の参道に稲藁造りのそば屋台が立ち並び釜揚げそばで人々をもてなしたようです。
この出雲地方にだけ伝わる食べ方は、江戸時代前半から続くといわれるほど古い文化です。
また、挽きぐるみと呼ばれるそば粉を使って打つのも特徴の一つです。そばの殻がついた玄そばを石臼で挽くので色が濃い、香りや風味が強いそば粉です。
噛みしめるほどに味わいがあるそばとなります。 (田中屋より)
まとめ
天穏にまつわる人たち第一回。そば処田中屋の田中俊樹さんでした。
「お客さんでなく参拝者の方だと思ってそば打ちとおもてなしがしたい」
とても素晴らしいお話でした。お店の造りも細部までおもてなしを感じます。
出雲を愛し、勉強熱心な彼は今後も技術を磨いて、想いの籠もった素晴らしいそばを提供していくことでしょう。
田中屋のそばと天穏の御神酒でおもてなしをして、出雲に来られる方に良い気持ちで参拝をしていただけると良いですね。
0853-53-2351
島根県出雲市大社町杵築東364
営業時間 11:00~16:00(そばがなくなり次第終了)
日曜営業・木曜定休
そば処田中屋隣接 (細い道を西へ)
持ち帰りのそばや蕎麦猪口などハイクオリティな品揃えのお土産屋さん
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