R5BY 土雲 つちぐも


#Concept
【R5BY】天穏 土雲(つちぐも)
生酛造り
酵母: 協会7号+野生酵母+乳酸菌発酵(もろみ)
原料米:改良雄町 精米歩合:60% アルコール分:16% 酸度:6.0
野生の天穏シリーズ、天雲の野生ということで土雲(つちぐも)です。前回のサケルは大きな反響とリピートの声をいただき、ありがとうございました。本当に救われました。天に漂う心地の酒をつくろうという天雲に対して、土雲は大地の中を潜って地層を掘削し、古代や原始を発掘しようとするアースダイバーや、埋もれている原始の姿を想像する土蜘蛛のイメージで名付けました。土雲はサケルと同様の現象が起こったお酒で、通常、アルコール度数が上昇したあたりで死滅するはずの乳酸菌がアルコール耐性を持っており死滅せずに増殖して乳酸発酵したお酒です。望まれて生まれたお酒ではありませんが、この酒は何かを訴えかけるような魅力があります。そしてサケルを飲んでいただいた皆様には理解していただけると思いますが酸度が上がったとしても、私の酒造りの基礎的な香味や想いはその液体の中から消えることはないようです。サケルが齋香の性格を持っていたように、土雲も天雲の性格を持っています。サケルよりも酸が低く、柔らかさや旨味のある香味や深みが感じられます。シャープなサケルとはまた違った美味しさがありました。サケルはサケであり、この土雲も天雲であるという、兄弟や裏表、鏡対のような関係性を感じることもできると思います。酒造的には酵母発酵と乳酸発酵が同時に起こるというところがこの野生の酒の最大の面白いところでしょう。乳酸発酵の負の部分を酵母が吸着して浄化する酵母レストの力を強く体感することができました。有機酸の組成も乳酸が増えるだけなので、飲めない雑菌類の酸が増える訳ではないようです。前回にお伝えした土の発生メカニズムが素直に出ただけである、山陰吟醸というベースに乳酸発酵が重なっただけであると見れば、日本酒の自然醸造の近未来像の1つなのかもしれません。これらの酒が美味しいとはいえ、このような意図しない物ができないように、この結果を良い方向に活かせるようにしていきます。皆様の感想を聞きながら、この事象と失敗が私の酒造りに今後何を期待しているか考えていこうと思います。(天穏 小島達也)
R5BY 土雲2火 改良雄町60% 生酛 ALC16%
土雲1火の完売により、タンク貯蔵していた土雲の2火をリリースします。今回の分で土雲は終売となります。サケル/土雲に関しまして、特殊な製品にも関わらす、お客様にご紹介していただき、最終版がリリースできます。ありがとうございます。
R5BYサケル/土雲はとても大きな出来事で、その消化に労力も精神も大きく費やすことになりました。しかし時間が経ってみれば、とても大きな学びを与えてくれた存在だったと思えるようになってきました。
サケル/土雲は私に発酵という自然現象の正体を教えてくれましたし、これだけ酸度が上がったとしても私の吟醸造りの性格がしっかりと酒に残ることも教えてくれました。
飲んでいただいた方には、これも自然発酵のひとつの形であり、私が行ってきた酒造りの要素もしっかりと感じられるような、人間と野生の融合した純粋な酒だったことを理解していただけると思います。
自然発酵の概念でいえば、サケルたちは日本酒のさらにその先に存在する酒であり、現代人の自然生命に触れたい願望を満たす酒であることは明白でしょう。
その要素は乳酸菌の作り出すⅮアミノ酸にあることが予測されます。このアミノ酸はまだまだ謎が多い存在ですが、人類がこのⅮアミノ酸を活用してきた発酵の歴史はすでに存在しています。
これらを非常に多く含む水もと酒母やサケルのような酒が醸造酒の本質を貫いていくように私は感じます。そしてこのアミノ酸が人間共通の情緒という概念を情報と記憶の伝達によって形成していることは確実であるように思います。
人間は生物のアミノ酸で肉体をつくり、微生物・細菌のアミノ酸で記憶を共有しているように見られます。人は本来、呼吸をして、食事をして、排泄するだけで自然生命の潮流の一部
としてその役目を果たしています。
サケル/土雲は既存の飲み手に衝撃を与えてその器を強制的に広げ、そしてまた新たな人たちを呼び込みました。若い人にもシンプルにうまい酒だと理解してもらえる。今となればこの酒が良いも悪いも判断ができないくらい大きなものを与えてもらいました。
最後の土雲リリースでいろいろと消化できたように思います。時代も大きく変わりました。古典的な山陰吟醸、自然醸造、サケル/土雲を経て、R7BYはどういう酒を造って、何をしていくか考え続けていこうと思います。
香:やわらかい香り、乳酸、酸
味:やわらかい口当たり、乳酸、酸、甘味、ほのかに4m的な青い香り、パイナップル様の香り、苦み、ほろ苦さ、キレ、シンプルだけど厚い香味
シンプルに美味しいパイナップルワイン。1火よりも柔らかさや甘旨味の印象が強く、酸が落ち着いてまろやかになって全体のバランスがとても良くなっている。酸はもちろん強いけれど、まとまりがあるので違和感がない。熟成も老ね感がなく、後味のホロ苦さのような熟成感があって面白い。アルコールも感じにくい。酸度が上がったとしても、酒の素性がよく、熟成によりだんだんと日本酒になってきている。
#Tasting
#Information
原材料名 | 米、米こうじ |
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原料米 | 奥出雲産改良雄町100% |
アルコール | 度 |
精米歩合 | 60% |
アルコール分 16.5度
日本酒度 -2
酸度 6.0
無濾過
1回火入れ
2025年10月~
アルコール分 16.9度
日本酒度 -2
酸度 6.0
無濾過
2回火入れ