純米 無濾過生原酒 6号酵母 R1BY

#Concept
【R1BY】
天穏 杜氏が小島になってから初めての6号酵母の酒です。
来季以降、酵母無添加の生酛山廃の酵母の一員として迎えるための布石として造りました。
例年出している7号酵母の純米生原酒の6号verです。
酒母やもろみの経過はほとんど7号と変わらない経過となり、前回と比較対照できる内容だと思います。
今回の6号酵母の採用の目的は蔵内に6号酵母を取り込むことにあります。
今回の取り組みに加え、来季の酒造りの前半戦では6号、7号、島根k1酵母を使用し、 蔵内に三種の協会酵母を漂わせ、酵母無添加の生酛山廃に取り込んでやろうという試みです。
最近では、私は日本酒とは多様の生命の痕跡を溶け込ませた液体だという認識を持つようになってきています。
1つの液体の中に多様な生命の痕跡を溶かし、 人間は多様な生命から溶け出た様々な成分を感じることで滋養強壮や生命感を得る。
そしてその自分ではない他生物の成分を感じることで、私は一人ではない、数ある生物の中の一員であると感じ、群れや共感性を得て安心を感じるのではないかという考えです。
アクション映画を見たら自分が行っているように錯覚して興奮する、美味しそうな食べ物の映像を見たら自分が食べたことを想像してヨダレが出る、楽しそうにはしゃぐ子供を見たら、親がいて祖父母がいてと幸せな家庭を想像するように私達は無意識に想像、連想して自分の事のように感じてしまいます。
現実的な味わいを構成して、その人に何を感じさせるか。
いまの天穏はそこまで来ていると思います。
そして日本酒とは「聖性」と「生命」と「他者」を感じさせること。
自然や神などの超像的なものを感じ、生命や子供といった未来を予感させ、私は仔ではなく群れの一員だと認識させること。
これができていたら無窮天穏となるでしょう。
この事を追求するために6号酵母を新メンバーに加えて今後の酒造りをしようと思います。
よろしくお願いいたします。
#Tasting
香り…
強くはないが華やかで上に抜けていくマスカット様の香り
味わい…
密度のあるマスカット、ライチのような4MMPのような吟味とイソアミル、鼻腔に抜ける麹や甘酒の香ばしい甘み、リッチ感、ガス感と輪郭ある酸と苦渋みのアミノ酸が締める。
吟味が在りながらもしっかり苦渋もあって、そのアミノ酸由来の苦渋は生熟で一体感が出て期待できそうな予感がします。
ライトジューシーでなおかつ締まってドライ感もでてきてわかりやすく美味しいです。
6号は酸を伴う芳香と蜜感があるような感覚を受けましした。
#Information
原材料名 | 米・米こうじ |
---|---|
原料米 | 奥出雲産五百万石 |
アルコール | 17度 |
精米歩合 | 60% |
■資料
天穏の酵母無添加生酛の酵母内容を
調べてもらいました。
大多数が野生化した協会酵母で野生
酵母は少ない結果となり、
狙い通りの結果となりました。
協会酵母(清酒酵母)純度 | (協会7号比率) | (島根K1酵母比率) | 野生酵母(非清酒酵母) | |
サンプルA | 92% | (65%) | (35%) | 8% |
サンプルB | 86% | (58%) | (42%) | 14% |
サンプルC | 96% | (52%) | (48%) | 4% |
サンプルD | 97% | (51%) | (49%) | 3% |
協会酵母も7号と島根k1酵母の
どちらかが入っている訳ではなく、
それぞれしっかり入っていることが
わかります。
このあたりが味わいの複雑さに
つながっているようです。
酵母添加の場合は
協会酵母純度100%で特定の種類の
酵母が 100%となるはずなので、
この結果が酵母無添加の
証明ともなりえます。
来期ここに6号酵母が入って
どうなるかが楽しみです。
6号酵母とは
丁寧にきちんとお伝えするために、
6号酵母発祥の
新政酒造株式会社様のホームページより引用
になります。
『6号酵母の遺伝的性質
6号酵母は、最近の遺伝子情報の解読により、
それ以降の清酒酵母の親であることがわかっています。
6号以降の清酒酵母は、
すべて遺伝的に6号の突然変異であることが
証明されているのです。
6号が「清酒酵母のEVE(原初の存在)」
と呼ばれる所以です。
これは前述のように終戦までの8年間
「きょうかい6号」のみの 酒造りが全国で
行われたことと無縁ではないと思われます。
なお、6号酵母自体は、
「酵母無添加」の生酛系酒母の 仕込にて
生まれた酵母です。
天然から現れた酵母ですので、
それ以上遺伝的にさかのぼることは
できないようです。
このため6号はそれ以前の1~5号酵母とは
遺伝的な関係的が薄く、
ゲノム情報においても大きな相違が
あることが実証されております。
この「6号酵母」の味わいですが、
現在の最新の酵母たちにくらべると、
地味な印象を与えることは否めません。
しかしこの酵母がベースとなり、
変異株が選抜されたり、 改造されたりして、
その後の酵母が現れたことを考えると、
むしろその慎ましやかな香味は勲章のようなものです。
芳香穏やかにして清冽。
長期間にわたる低温状態に耐えうる
強健な発酵力を持ち、
高いアルコール発酵能力を誇る。
「きょうかい6号」は、
まさに「清酒酵母」の本質
そのものといえる酵母なのです。』
以上、 新政酒造株式会社様のホームページより引用
になります。
他にも詳しく解説してありますので、
是非お読みください。
7号酵母・協会酵母については、
宮坂醸造株式会社 様のホームページ
日本醸造協会 ・
にてご覧ください。
島根K1酵母は、昭和61年に熊本酵母から選抜したのを島根で培養し続けていますので、協会9号と同じように元株は熊本酵母になります。